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環境センサによる介護者サポートシステムの開発

概要 日本では少子高齢化が加速しており、施設・在宅における要介護者の不足と心身への影響が深刻化しています。我々は介護者の負担減を目指し、非接触型の機器を用いた介護者サポートシステムを開発するために、研究を進めています。 本研究では、小型環境センサで得られる室温、湿度、騒音、明るさ、大気圧情報から、要介護者の生活環境が適切な状態であるか調査しました。環境情報から熱中症などの危険度が分かれば、介護者へのアラートやその家庭・施設内へのオンデマンド対応が可能となります。 そこで、2週間~1ヶ月の環境データ(室温、湿度、騒音、明るさ、大気圧情報)を収集し、対象者の生活パターンを把握しました。 対象者の在室時間の長い居室に小型の環境センサを設置、センサから取得されたデータを利用し、その結果を対象者の行動の実際と比較することで、精度良く「通常の生活」と「そうでない生活」を判断(アラートを出す)することができます。 構築したシステムの実証実験を行い、(a) アラートの精度検証、(b) 対象者の増加に対するシステムの堅牢性のチェックをおこないました。また、要介護者の環境把握によって介護者がどのような負担軽減がなされたかをインタビューにより分析し、システムにフィードバックしました。
環境センサによる介護者サポートシステム 要介護者の居室に設置した環境センサから得られたデータは、Bluetooth LE 経由でエッジコンピュータに送信、整形と暗号化された後に外部サーバに転送できるようにしました。サーバでは日毎の CSV ファイルとして格納し、同時に要介護者の行動認識が自動で実行されるようにしました。データから指定された行動が検知された場合、介護者や介護施設の受信端末に結果が通知されるようにしました(左図参照)。またデータを基に、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)を利用した最高・最低気温の予測を通知する機能を実装しました。
システム概要
非接触型機器による要介護者の行動推定 本研究では特に騒音と照度の変化に着目し、要介護者の起床、就寝、居室の不在を行動推定の基本としました。取得した環境データから、対象者の居室内での行動時に発生する生活音が騒音レベル、就寝や起床時に行う電灯の使用が照度レベルの変化として認識することを確認(右図参照)、同時に要介護者や介護者のヒヤリング内容と突合し、精度を確認しました。
センサデータ
オーダーメイド型の行動推定と介護者への通知システムの実装 要介護者の夜間排泄検知のニーズがある介護者に対し、排泄通知システムを実装しました。排泄行為はプライバシー情報が多く含まれるため、映像を用いない本システムを使用しました。 要介護者が夜間使用するトイレに環境センサを設置、排泄行為に付随して変化する照度、騒音をモニタし、日毎の環境データおよび一定期間の環境データから要介護者の夜間の排泄行動時間を推定しました。未使用時のトイレの照度、騒音レベルを測定し、要介護者のトイレ使用時の閾値を設定、閾値を超えた際に「トイレを使用した」と推定し、トイレ使用の通知が可能かを検討しました。図は実際にトイレ使用を検知した例です。 今回対象とした要介護者は、夜間電気を使用せずに排泄をしていることがあることが、取得データおよびヒヤリングの突合から推定されました。そのため検知の条件としている騒音レベルの増加に重みを加え、一般的な照明スイッチの使用による行動推定と比較しても、要介護者その人の状況に合わせた行動推定や行動検知ができるようにしました。 これらの推定結果を介護者の受信端末に通知し(図参照)、介護記録と照合しながらその精度を確認しました。また Pythonを用いてWebアプリも作成しました。介護者からのヒヤリングでは、夜間の排泄回数や時間がわかることで、就寝前の水分摂取量の調整や就寝前のトイレ誘導のタイミングを検討しやすくなったとの回答が得られました。このように、要介護者に対して非接触型の環境センサを用いて環境データを測定し、その閾値や条件を対象者に合わせて調整することで、オーダーメイド型の行動推定および通知が可能となりました。
トイレ検知、LINE通知

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